技術情報

メタバース(Metaverse)、新しくて、いつもの世界

2021年後半から「メタバース (Metaverse) 」を耳にされた方が多かったことと思います。2022年1月になり、関連するサービスや仮想空間が多くなってきましたので、ここで整理してみます。

(2022/03/05 追記)

読み方は、「メ」にアクセントがある発音が正しいのだそうです。(「ユニバース (Universe) 」は、「ユ」にアクセントがありますから、それと同じ要領かと思います)

メタバースとは何だろう

定義が難しい

メタバース (Metaverse) は、コンピュータによって構築された環境、他のユーザーと交流できる仮想現実 (Virtual Reality) 空間のことです。主に 3次元空間であること、そこで提供されるサービスであること、そして現実世界との結びつき(リンク)があることを示す言葉として使われているように思われます。

用語検索 – ZDNet Japan

また、Google トレンドで他国の様子を見ると、metaverse crypto や、metaverse nft などのワードで検索されているようです。NFT (Non-Fungible Token、非代替性トークン)との結びつきで語られる側面が、他国では強いのでしょうか。

NFTとは、仮想通貨のブロックチェーンの仕組みを用いて、作者や所有者の情報を記録する技術が施されたデジタルコンテンツ・デジタル資産のことです。これの売買によって利益を得る場として、機能しているのかもしれません。

【必見】メタバース(仮想空間)とは?仕組みやNFT・仮想通貨関連銘柄まで徹底解説! | InvestNavi(インヴェストナビ)

仮想現実空間で人との交流があって現実とのリンクがある。分かりやすいところでいうと、最近のゲームはこの要素を持っています。「Minecraft(マインクラフト)」「あつまれ どうぶつの森」、「Fortnite(フォートナイト)」、「Apex Legends(エーペックスレジェンズ、エペ)」などは、メタバースだと捉えられると思います。ゲームになじみがない方にとっては、映画「サマーウォーズ」の中に出てきた空間 OZ(オズ)が、分かりやすい姿かもしれません。

あつまれ どうぶつの森 | Nintendo Switch | 任天堂

広がる新しい世界、当たり前のいつもの世界

早くからこれらのゲームをやっている人や若年層は、もう日常的に触れていて、取り立てて「メタバース」と呼ばなくても既に当たり前にそのプラットフォームにいる生活を送っています。これまでなじみがなかった人たちにとって広がりがある新しい世界であり、また同時に慣れ親しんだ人には、或る意味では当たり前のいつもの世界でもあるわけです。

現実世界からの地続きで仮想世界を見ているのか、仮想世界ありきで現実世界とのつながりを見るのか。基盤(プラットフォーム)のことですから、プラットフォームそのものを目的で語るのではなくて、プラットフォームを手段で語ることが必要そうです。

プラットフォームのご紹介

メタバースとして扱われている(またはメタバースと称している)プラットフォームのうち、私が使ったことのあるものを紹介いたします。

cluster(クラスター)

メタバースプラットフォーム cluster(クラスター)

cluster(クラスター)は、公式にはこのように説明されています。

「cluster (クラスター)」はスマートフォンやPC、VR機器など様々な環境からバーチャル空間に集って遊べるメタバースプラットフォームです。音楽ライブや発表会などのイベントの他、いつでも参加できるバーチャルワールドでチャットやゲームを楽しめます。

cluster 公式 Web サイト概要より

「ワールド」と呼ばれる、それぞれ固有の世界が広がっていて、好きなように行き来できます。単純に遊ぶ空間が広がっているだけでなく、のんびりくつろぐワールド、写真やイラストを楽しむワールドなど、楽しみ方はいろいろです。

仮想空間を行き来するのは、自分自身の「アバター(avatar)」です。「アバター」は、容姿を自由に変更できるので、それだけでも楽しめたりします。かつて私は Second Life というゲームをやっていましたので、それに近い感じでしたから、割とスッと使うことができました(Second Life は今でも接続者数が多いです)。

昨年参加したオンラインのイベントのいくつかは、cluster 上で行われていました。初めからこうした空間に慣れている皆さんだったら、この先のイベントごと(例えば成人式とか同窓会とか)もここで行われても不思議じゃないかなと感じました。

また、かしこまったイベントでなくても、何となく気の置けない仲間とダラダラ過ごす場所、として使われている側面もあるみたいです。

昨年仕事でお世話になった小平陽子さんの「諏訪の龍神さま」ワールドが、先日 cluster 上に出来ましたので、早速行ってきました。並行して行われている展示会とのリンクが感じられるところでした。

メタバース(仮想空間)に『諏訪の龍神さま』が舞う!~慶應義塾大学・藤田康範研究会と岡谷美術考古館『小平陽子展』がコラボレーション~
展示を見にきていた人と少しお話ししました

oVice(オヴィス)

oVice 「オヴィス」 – コミュニケーションを促進するバーチャル空間

oVice(オヴィス)は、自ら Business Metaverse と称していて、公式にはこのように説明されています。

oVice(オヴィス)はオンラインでのコミュニケーション不足を解消できるバーチャル空間です。アバターを使いオンライン画面上で自由に動いて話しかけられるため、バーチャルオフィスやオンラインイベント会場、コワーキングスペースとして利用することができます。

oVice 公式 Web サイト概要より

昨年参加したいくつかのオンライン上のイベント・勉強会の折に、oVice を使いました。主催者が部屋を用意して、そこに必要に応じてテーブルや席、登壇場所などを作ります。(スクリーンショットが無いのが残念です)

現実世界での相手との距離感をうまく取り入れているなあと、私は感じました。例えば、以下のような感じです。

  • 部屋の中でパラパラと立っている際には、或る程度近づいて、その人にポインタを向けて話しかける
  • 同じテーブルの席についた人と音声・映像によるやり取りができて、離れた席についた人たちの会話は聞こえてこない
  • 全員に等しく音声や共有画面を送れるので、普通に会議ができる

ユーザーは、ビジネス用途で使われる企業が多いです。個人で始める(部屋を持つ)のは費用もかかるので、なかなか触れる機会が無いかもしれませんが、一度やってみていただきたいです。

限られた世界の話ではなくて

こうして紹介すると、閉じた・限られた世界の話にも見えますが、実は業種・職種を超えて、幅広く関わるプラットフォームの話だと、私は思います。

例えば、以下の記事には製造業こそ「メタバース」に真剣に向き合うべきだ、とする説明が書かれています。現実空間で取得した情報をもとにメタバース上にうり二つの空間を作り出す技術「デジタルツイン」によって、例えば工場全体をつくり出し予めシミュレーションしたり改善活動に結びつけたりしようというのです。

製造業こそ「メタバース」に真剣に向き合うべき

(2022/01/26 追記)

2022/01/26から開催されている IIFES 2022(オートメーションと計測の先端技術総合展)オンラインでは、「デジタルツイン」に触れている内容がありました(私が見た中では、オンラインスポンサード企業の日本マイクロソフト社でした)。リアル展示会との併催で、リアルは 1/28(金)まで、オンライン展示会は 2/25(金) までです。

「IIFES 2022」 公式サイト

今後どういった広がりが見えてくるのか、或いはしぼんでいくのか。一過性のブームで終わるのか、確かなプラットフォームとして定着するのか。日本と他国との間で、或いは世代間で、使われ方に違いが出るのか。この先のことが楽しみです。